戦争



通路内は意外と綺麗にされていた、ついでに換気もされているようで地下だが蒸し蒸しすることはなかった。
「ここ・・・ですね」
少年はそう言いながら、なにもなさそうな壁の前に立った。
・・・何か仕掛けでもあるのだろうか?
「ここを押せば・・・」
少年の右手が伸び、壁の一部に触れ、そして押し込んだ。
そうした瞬間、目の前にある[壁]が縦半分に割れ、横にある隙間に埋まっていく。
そして、道が現れた。
「・・・よかった、殆ど使われることがないから使えるかわからなかったけど」
「まぁ、こっから先はどこに繋がってんだ?」
俺は一応銃を前に構え、犬獣人の少年に聞いた。
「えっと・・・確かこの先は緊急通路に続いてるはずです」
緊急通路か、こりゃ都合がいいな。
正規の道を知ってる兵共ならここは通らないだろうし、安全だろう
・・・だが、なにかあったら面倒だ、銃は構えておこう。
「で、その先はどこに?」
俺は前に歩きながら聞いた、自分の歩幅に合わせて奴も着いてくる。
「食堂・・・ですね、食堂の隠し扉に繋がってます」
少年は顔をこちらに向けながら言ってきた。
・・・・・・なにかがひっかかった、このガキについて、だ
・・・こいつ、傭兵にしては内部事情を知りすぎていないか・・・?
最高機密であろう隠し通路すら知っている・・・傭兵にしては・・・
・・・考えすぎだろうか、少し
まぁ今はいいだろう、どのみち何かと役に立っている。
「・・・おい」
俺が呼びかけると少年は耳をピンっと立て、こちらを見てくる。
「なんですか?」
「この基地の[リーダー]はどこだ?」
こいつにはこう言った方がわかりやすいだろう。
「リーダー・・・この基地の最高司令官の事ですか?」
「・・・あぁそうだ、居場所わかるか?」
・・・こいつ、頭いいのか悪いのかわかんねぇな
「えっと・・・確かすごい数のセキュリティを抜けなきゃいけないんですけど・・・」
「んなもん、壊しゃいいだろ?」
「それが・・・」
少年は口をもごもごさせた。
「なんだ?いってみろ」
俺がそう言うと少年は俺の顔見て
「・・・セキュリティが置かれている場所で火気なんて使ったら熱源察知センサーに引っかかって周りからレーザーやら機関銃の弾などが・・・」
「・・・それじゃ[俺]には無理だな」
少年は、えっ?と言いたげな顔をして俺を見あげた。
俺は銃を構えたまま、体勢は変えずに言った。
「俺の相棒に任せりゃいい、奴は兵器、機械のエキスパートだ・・・どうとでもなるだろう」
「・・・それなら」
小言で微かに聞こえた
「なんだ?」
「・・・いや、なんでもないですよ?」
・・・気のせいか?
いや、確かに聞こえたが・・・こいつ・・・
・・・今更気にしていてもどうにもならない、か
こいつが何を企んでいても俺は俺で居ればいい、そうしよう。
      今はなにより、相棒を探さねぇとな・・・どこにいるんだか
 
「はっくしゅん!」
「あら、どうしたの?風邪でも引いたの?」
俺は鼻を右手で軽く拭いた
「いや・・・寒気もなにもない、突発的なものだろう」
「ふふ、誰かが噂をしてるのかもね」
噂・・・か、してるならおおよそあいつ、なんだろうな。
・・・相棒、無事に基地に入れていたらいいが。
そう思いながらも歩いていたらとある扉の前で彼女が止まった。
おおよそ、ここが調理室かなにかなのであろう。
「さて、ここが・・・」
彼女がゆっくりと扉を開ける、そして最初に目に入った物が
・・・ベッドだった、およそキングサイズはあるだろう。
「私の部屋よ・・・ってどうしたの?」
・・・呆気に取られていた、そして体が固まっていた。
ま、ま、まさか今から・・・
「・・・なにか、変なこと考えてないわよね?」
体がビクンッと波打った・・・確実に図星だ。
それを見て、彼女は自分に近づき、顔を覗いてきた。
「別に、ベッドでどうとかするつもりはないわよ、ほらあっち見てみなさい?」
そう言われ、指を指された方角を見ると小さいキッチンがあった。
「今の時間、調理室は開いてないのよ、別に開けれないことはないんだけどね・・・いちいち頼むのがめんどうだから私の部屋で作ってあげる。」
よく周りを見ると、女性物の家具や化粧棚の様な物とその上に化粧品などがあった。
・・・なるほど、これで合点がいった。
俺は顔を軽く上げ下げし、頷くと彼女の方を向き
「すまない、早合点してしまった」
「別に、気にしてないわよ?それに・・・」
・・・なにかを言いかけたが、彼女は言うのを止めた。
「・・・まぁ、適当に色々作るから適当に座ってて頂戴♪」
「あ、あぁ・・・すまないな」
俺がそう言うと彼女は笑顔を見せ、キッチンへと走っていった。
「・・・・・・可愛い・・・はっ」
俺は頭をブンブン左右に振った
一体何を考えているのだか・・・相手は敵だぞ?
そんな奴に恋愛感情を抱いたとして、お互い傷つき合うだけ・・・だ
俺は右手で軽く頬を叩くとテーブルがあるところ座り、彼女を待った。

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