戦争

「おい、そろそろ上がってこい」
俺は座っている小岩から少年に声をかけた。
それなりに時間は経っていた・・・相棒一人に任せる訳にはいかねぇしな
「あ、はーい!」
少年は俺の方を向き、池の中で衣類を絞り、着ながらゆっくりと岸に向かって歩いてきた。
俺はと言うと、先ほどの兵の血がかかったリボルバーを隅々までメンテナンスしていた。
ったく・・・服や顔にかかるのはいいが、俺の銃にまでかけるなって・・・

      ―――――バシャン!!

いきなり少年の後ろから水しぶきが上がった・・・少しいやな予感がする。
俺はとりあえず少年の元に走った、リボルバーは腰にあるホルダーに入れておいた。
「おいっ!さっさとこっちに来い!!」
「えっ・・・」
少年が後ろを向いた刹那・・・
         ―――巨大な何かが口を開けていた
「ひっ・・・ぃぃ・・」
少年はそれを見て固まり、動けなくなっていた。
俺はすぐに岸辺にいる少年を走りながら抱き、すぐにその場を離れた。
そして、その後すぐに巨大な何かを見ると・・・すでに口は閉じていた。
およそ補食でもしようとしていたのだろう、こちらを馬鹿でかい目で睨んでいる。
「てめぇに喰わせるもんなんてねぇんだよ・・・」
そう遠くから俺は呟いた、勿論奴を見ながら。
・・・・・・聞こえていたかは知らないが、突然池から奴が出てきた。
全身を見ると・・・かなり巨大なナマズに手足がついたような容姿だ。
正直、気持ち悪い
「さっさと逃げねぇと・・・やべぇな」
俺は少年を肩に担ぐと本拠地があるであろう方向に逃げていった。
だが・・・奴はあの巨大な体を短い手足で支え

     俺たちを追いかけてきた。

「う・・・うおぉぉぉぉぉ!!」
俺は脇目もふらずに走った。
あんなの・・・銃如きでどうにかなる相手じゃねぇよ!
・・・せめて相棒のレーザーなりロケットなりねぇと・・・
そう考えながらも全速力で走っていたが・・・
気のせいか、さらに近づいてきている気がする。
「っくそ・・・あんな図体しておいて足早いのかよっ!」
一応森を駆け抜けているが・・・奴、全ての木を押し倒して追いかけてきている。
追いつかれたらまず生きられないだろうな、確実に
不意に少年が目に入った。
「・・・こいつを置いて・・・」
俺は言いきる前に頭を振った、なんて事考えてんだか・・・
だが、そうでもしないと追いつかれる事も目に見えていた。
・・・戦うしかねぇのか?あんな巨大生物と?
・・・・・・俺は止まり、少年を降ろした。
「えっ・・・」
「・・・てめぇはさっさと逃げろ、ここは俺が引き留める」
そう言うと俺はホルダーに入れていたリボルバーを両手に構えた。
そして銃弾は、相棒から貰った灼熱弾、威力はわからないが・・・
「で、でも、死んじゃいますよ!」
そういいながら少年は俺のズボンを掴んでいた。
「・・・さっさと逃げろ!てめぇは邪魔だ!!」
俺はそう睨みながら言い放つと足を振り、少年を引きはがした。
「うっ・・・うぅ・・・」
少年は転け、少し涙目になりかけながら
        ―――絶対に生きて・・・
そう呟き、進んでいた方向に向かって走り出していた。
「これでサシだな・・・よし」
俺は再び奴の方に向いた、正直、見るのも嫌になる。
それが迫ってきているんだ、更に嫌悪感は増す。
「てめぇなんざに時間取られてる場合じゃねぇんだよ・・・」
俺は奴の眼に照準を合わせた。
皮膚は最初から狙う気はない、どうせ通りもしないだろう。
ならば・・・ピンポイントに弱点であろう場所を狙った方がいいだろう。
・・・もうすぐ側まで奴は走ってきている、チャンスは一度だろう
「・・・死ね、化け物!!」
        ―――二発の銃声が周りに轟いた
俺は眼を閉じていた、どのみちこの二発の銃弾が俺の生死を決める。
そう思うと、少しだけだが・・・恐くなった。
       
         ―――ドンッ
 
俺の目の前で鈍い音がした・・・自分に痛みはない。
ゆっくりだが、眼を開けると・・・
そこにはさっきの怪物が両眼からは凄い量の血が流れ、口は補食しようとでもしていたのだろう、大きく開いていた。
近くで見れば見るほど気持ち悪い上にすごい生臭い。
しかも、眼に当たった灼熱弾が中ではじけて肉片が散らばっていた。
「・・・くっせぇな・・・くそが」
俺は肩の力を抜いて後ろを向いた。
そして息を思い切り吐いて、吸った。
生臭い臭いも混ざるが・・・生きている実感はある。
「よし・・・さっさといかねぇとな!」
俺はそう言うとリボルバーをホルダーに戻し、さっさとこの場から抜け出した。
     ・・・・・・奴はもう本拠地ついてっかな・・・


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