戦争

俺は森の中を走っていた、さすがにあの戦場の真ん中を走る気はなかった。
それに、本拠地に進入するだけなら遠回りでも森の中を通った方が都合がよかった。
「・・・ちゃっちゃと終わらせねぇとな・・・」
奴に貰った弾は特殊弾を合わせ1000発もなかった。
単独で来てくれりゃ足りるだろうが・・・集団で来られたら厄介だな。
・・・ナイフでも持ってきたらよかったが、数が知れていたので今日は机の上に置いてきてしまった。
「あ〜、もう・・・絶対報酬金ぼってやる」
最低倍はもらわねぇと割りに・・・
               ガサッ!
少し後ろの方で何か物音がした、動物か、それとも・・・
俺は即座に銃口を物音のした方向に向けた。
敵であるなら撃ち殺す。
「てめぇは・・・どっち側だ?」
そういうと相手は茂みから現れた。
・・・銃口をこちらに向けて。
「ぼ、僕は・・・義獣軍のの・・・傭兵だ!」
よく見なくてもわかるが、どう見ても犬獣人の子供だ、まだ15歳も行ってないんじゃないかと思える。
そして、人を殺したことがないのだろう、さっきから銃を持っている手が震えている。
「ほう・・・じゃあ敵だな?」
俺はそう言い終えると共に少年の足下に一発銃弾を撃った。
勿論威嚇だ、俺に子供を殺す趣味はない。
「ひいぃ!!」
「ん・・・こえぇか?」
俺は尻餅を突いた少年に近づき、銃口を額に向けた。
「あ・・・あ・・・うぅ・・・」
そうすると少年は目から大粒の涙を零し、もの凄い怯えた目でこちらを見ていた。
・・・これ以上脅したら失禁しそうだな、こいつ
「・・・おい、てめぇ――――」
俺がいいかけた瞬間、後ろから銃声が響いた。
そして狙いは・・・俺だった。
「っくそ!」
とりあえず俺は少年を抱き、右に無理矢理飛んだ。
そして銃弾は俺の前にあった木に撃ち込まれた。
跡を見て・・・おそらくハンドガン系統だろう、そこまで強くない。
「わわわわわ・・・」
少年は俺の胸の中でうずくまっていた。
俺はすぐに胸から引き離し、木の陰に座らせた。
「いいな、絶対そこから動くな・・・動いたら命の保証はないからな」
俺はそう言うと立ち上がり、周りを見た・・・
およそ数人に囲まれているだろう、厄介な事になったな・・・くそが
・・・まぁいい、ぱぱっと片づけてやる。 「おい、てめぇら・・・来いよ」
俺は前に銃を構えた

               「ショータイムだ!!」

ババババババッ!!
「いくら倒してもきりねぇな・・・はぁ・・・」
俺はガトリングを敵陣に放ちながらため息をついた。
こいつら、人数が減らねぇと思ったら
「・・・全員強化人間か何かかよ・・・銃弾当たっても平気な顔してやがる」
そうだ・・・少し前から気付いてはいたが
敵全員、傷を受けたところから治癒してやがる・・・一体なんなんだ。
「本当に・・・こんなの聞いてねぇよ・・・くそっ」
俺は愚痴をこぼしながらミサイルポッドに弾を込める。
さっさと入れてしまいたいが・・・この重装備のせいでどうやっても限度があった。
だが、最前線で重火器を扱う俺にとっては、この重装備こそが命だった。
ある程度の弾丸は弾いてくれるからだ、その分重さも、動きも制限されるが・・・
「さてと・・・だが治癒されるのならばこちらに分が悪いな・・・ん?」
ふと敵兵を見ると・・・奴ら、目の前が見えていないのか、よく躓いていた。
しかも平地でだ、普通なら躓く要素すらないが・・・
「・・・そうか!」
俺は有ることに気付いた。
いくら体を粉砕しても治癒する体。
紅く染まっている眼。
そして平地での躓き・・・
俺はすぐ近くにいた仲間の兵士を呼んだ。
「おい!そこの聖竜軍の兵士!」
そう言い放つと軽装の竜人の兵士が俺に近づいてきた。
「なんだ!今お前の話に――」
「いいから聞け!・・・今すぐ動ける者を聖竜軍の本拠地に集合させろ!・・・この前にいる軍は罠だ!」
俺は荒々しい声で言った。
およそ、本来の兵は本当に900位であろう。
そして俺は気付いた。
その900の兵が確実にすでに本拠地の近くにいるのだろうと。
「なっ・・・それは本当か?!」
竜人は驚いた様で眼を見開き、口をだらしなく開けていた。
「あぁ、およそな・・・この先にいる兵は幻覚だろう、種明かしは・・・」
俺は周辺を見回した・・・空を見ると怪しげに旋回している鴉がいた。
「・・・奴だな!」
俺はライフルを撃ち込んだ。
弾は鴉の体を貫通し、そして鴉はそのまま落ちていった。
そうすると
「お、おぉ!本当だ!敵兵が消えていく・・・」
何千といたであろう、敵兵が砂になって消えていった。
やはり、読みは当たっていた・・・となるとだ
「・・・お前ら兵士は本拠地の守りを固めろ!・・・もう奴ら聖竜軍の本拠地近くにいるはずだ!」
「わ、わかった・・・」
竜人は両手で輪っかを作り、口の前に出し、魔法陣を展開した。
――全兵士に告ぐ、今すぐ本拠地に戻り守りを固めろ!
簡易なメガホンと行ったところだろうか、周りに響き渡る。
俺はそれを後目に全ての重火器を担ぎ、敵の本拠地に歩き出した。
「!・・・おめぇはどうするんだ?」
竜人がそう俺を呼び止めた。
俺は軽く顔だけを竜人に向け
「・・・相手は約900、それくらいなら1200の兵がいるお前達でもどうとでもなるだろう?」
「本拠地は、俺と相棒で潰す・・・わかったらさっさと行け」
そして顔を元に戻し、敵の本拠地へと進んでいった。


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