戦争



俺はそう言うと女に向かってデスペラードを放った。
わざと壁に当て、跳弾させ、女を全方向から弾で狙いながらも前方向からは無数の弾丸が女を襲う。
「・・・そこっ!」
彼女はそう言うと俺と同じように乱射してみせた・・・だが跳弾すらしていない。
「ははっ!どこに撃って・・・!」
俺がそう言おうとした瞬間に、俺は気付いた。

           すでに彼女を囲む銃弾が無くなっている事に

「ふぅ・・・めんどうな技、ね、いちいち疲れちゃうわ」
そう言うと彼女は首を回しながら銃口を熊獣人の顔に向けた。
「でも、もう見切っちゃったわよ?あなたのデスペラード?」
俺は呆気に取られていた、余りにも早すぎるからだ。
「うそだろ・・・?!っく!!」
俺はもう一度彼女に向かってデスペラードを放った、そして寸分の狂いもなく彼女に的を絞る。
「・・・もう無駄よ?」
そういうと彼女は先ほどと同じように乱射をした。
・・・やはり全て落とされている、綺麗に相撃ちになった銃弾が地面に落ちる。
「だって、あなた全てが完璧なんだもの、だからこそ、読みやすい。」
「的だってそう、跳弾をさせて相手を惑わせる気なんだろうけど、最終的にはそれすら相手の身に落ちていく」
「簡単に言えば・・・無駄のない完璧な乱射、だけどそれだからこそ穴がある。」
「・・・さぁ、どうする?これを聞いてもあなたが闘いを続けるなら私は止めない、だけど・・・」
彼女は俺の弾が入っている袋を見る。
「あんな量を乱射し続けると、あなたの負けは確実よ?」
・・・・・・確かに、もう余り無駄遣い出来るほどの弾は残っていない、正直、デスペラードが出来てもおよそ10回が限界だろう。
だが・・・
俺は考えた、この窮地を生き残る術を、とても短い時間で。

            ・・・そして、結論は出た。

「・・・こうするしかねぇよな、もう」
俺はそう言うと灼熱弾を込めた、そして左手に持っている銃で女の足下を狙いながら、右手は扉に向けた。
この間、一秒にも満たなかっただろう、何故かその時だけは時間がすごいゆっくりと流れていくような感じがした。
「相方ぁぁぁ!!ガキ持って扉に走れぇぇぇぇ!!!」
「!・・・いくぞ!!」
俺はそう言うとまず女の足下に一発撃ち込んだ後、扉に両方の銃に入っているだけの灼熱弾を撃ち込んだ。
「きゃっ!」
・・・そうすると予想通り扉は熱で曲がり、灼熱弾の爆破で木っ端みじんになった。
そして女は足下に撃った灼熱弾の爆風でずっこけた、いい気味だ。
「相棒、ここのボスの居場所はそのガキが知ってる!後は任せたぞ!!」
俺はここから出ていく相棒達に向かって言い放った。
「・・・了解した、お前も無茶するな」
そういうと奴はガキを抱えてこの部屋を出ていった。
「あぁんもう・・・扉あんなにしちゃって・・・」
そう言いながら彼女は立ち上がった、尻をさすりながら。
「さぁて・・・これで遠慮はいらなくなったな・・・すまないが、卑怯な手を使わせて貰うぞ」
「卑怯・・・ね、そんな弾を使ってる時点でもうあれだけど、いいわよ?また見切ってあげる。」
女はそう言いながら俺に向かって銃を構えた。
俺は・・・左手の方の銃をホルダーに収め、右手だけで銃を構える。
「悪いが、生き残らないといけないんでな・・・恨むなよ?」
 
               「・・・・・・出てこい、デビルズトリガー!!」

「あのお兄ちゃん、大丈夫なんでしょうか・・・?」
少年が俺と並走しながら聞く。
「あぁ、大丈夫だ、奴は死なない・・・所で、だ」
次は俺が少年に問いた。
「お前はここから敵の本星の居場所がわかるのか?出来るなら案内をして欲しいのだが・・・」
俺がそういうと少年は立ち止まり、こう言った。
「えぇ、わかりますが・・・先に武器を取りに行きませんか?さすがに手ぶらじゃ危ないような」
「・・・それもそうだな、武器庫に案内してくれるか?」
「はいっ、こっちで・・・」
少年が角を曲がろうとした瞬間に少年は戻った。
「どうした?」
「いや、あの・・・敵兵が戻って来ちゃったみたいで・・・武器庫に繋がる道に敵兵がたむろしてるみたいで・・・」
少年はあたふたしながら答えた・・・だがそれでは武器を調達には行けないな。
「・・・しょうがない、このまま行くぞ・・・案内してくれ」
「えっ、でも武器は――」
「道中であればいいが・・・無ければ無かったときだ、今は急ぐぞ、見つかる前に行かなければ」
「で、でも・・・」
俺は少年の頭に手を置いた。
「・・・心配するな、お前だけは守ってやる・・・さて、いくぞ?」
「・・・はい、分かりました・・・こっちです!」
少年はなにか吹っ切れたのか、ボスの居場所まで走っていった。
俺もそれについて行く。
・・・まぁ、どうにかなってくれるだろう、いつもそんな感じ、だ。


「な、なによそれ!?」
「まぁ、驚くのも無理はないだろうな・・・この世にはない物、だしな」
そう言うと俺は左手を掲げた・・・相変わらず気持ち悪い形してやがる。
デビルズトリガー・・・簡単に言えば悪魔の銃だ、悪魔との契約・・・サタンと契約を結べば力を貸してくれ、その銃口からは完全追尾する闇の弾が発射される。
勿論通常の弾では弾き返す事はおろか、反対にその弾すら喰ってしまう。
・・・だが、デメリットはある。
1、まず俺の手に銃自体が俺の手に絡みつき、侵食を始める。
2、およその制限時間は2分、それ以上は体が保たない。
3、召還条件に「デビルズトリガー!」と言い放たないと出てこない、サタンにこれだけは忘れるなと念を押されたくらいだ、正直いらないだろう。

まぁ、そんなデメリットがあるが・・・これがあればこいつに勝てる。
「・・・さっき、また見切るとか言ってたが・・・これを見切れるか?」
俺はそう言うと彼女に向け一発、闇の弾を放った。
「そんなの・・・っ?!」
女は先ほどと同じように相撃ちしようとしたが、闇の弾はそれを飲み込み、尚も女に向かって行っている。
「な、なんなのこれっ!?」
女はそういいながら避けようとしたが・・・追尾をするこの弾には意味がなかった。
       
                ―――ボスッ!

「あっ・・・なにこれ・・・体から力が・・・」
弾が当たり、女の体の周りに闇の障気が漂うと、女は力無く地面に倒れた。
「次、当てればお前は永遠に闇の底で眠る事になるが・・・どうなりたい?」
俺はそう言いながら銃口を女の頭に向けた。
「くぅっ・・・こんなのってありなの・・・」
そう言うと彼女はゆっくりと眼を閉じた・・・すぐに寝息が聞こえてきた。
「・・・よし、これでいいな・・・やっぱ女は相手にしたくない」
俺は左手を振り、こう言い放った。

            「・・・結合解除っと、さて、奴らを追うか」

そう言うと俺は扉を蹴り開き、敵兵が居ない事を確認すると適当に走っていった。

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