戦争

「はぁ・・・はぁ・・・」
すでに業火と化している戦争の中で、一人の熊獣人は戦火から逃れ、森の岩陰で休んでいた。
「ったくよぉ・・・依頼じゃこっちより相手のが数少ねぇっていってたのによぉ・・・」
そうだ、依頼にはこっちが約1200、相手が約900と書いてたはずだが・・・
実際の所、900なんて事はなく、多分ゆうに2000は越えているだろう。
「くそっ、簡単な仕事かと思って受けたのになんだよこのざま・・・」
熊獣人にはもう弾がなかった、そう、軽い仕事だと思い、いつもの半分くらいの弾しか持って来ていなかった。
こうなったら・・・死んだ奴の持ってる弾奪うしかねぇな、俺はそう思い辺りに死体があるか探したが・・・
「・・・くっそ!あんなとこいってたんじゃ狙われちまう!」
そう、死体が有る位置は銃弾が右往左往と飛んでいた・・・んなところ行けるわけねぇだろ。
俺は残り少ない弾丸を見るとため息をつき、自分の2丁のリボルバーにこめていく。
「本当によぉ・・・こんなんであの金額じゃ割りにあわねぇよ」
そんな事を愚痴っていたら
・・・・・・ガサッ・・・
「・・・っち!」
俺はその音を聞き即座に拳銃を向けた・・・だがもうすでに相手はその場からいなくっていた。
「・・・一体なにをしてるんだお前は?」
そう言われる瞬間に頭を殴られた、軽くだが少し目の前が霞んだ。
・・・この後ろにいる奴の正体はわかっていた。
俺は軽く頭をさすりながら顔だけ後ろを向き、相手を見た。
「・・・てめぇ、頭叩くな!いてぇだろうが!」
「お前の頭はあれくらいじゃへこまないだろう」
熊獣人の目の前には竜人がいた、もの凄い重装備をしている。
・・・実は俺の相棒なんだがな。
そう、俺たちは傭兵・・・まぁ政治の犬ってこったな。
「十分痛いわ!・・・そんなことはいい、お前弾持ってねぇか?」
俺は右手に持っている弾数を見せた。
「む・・・なぜもう弾が切れかけているのだ?いつもの量ならまだ半分は」
「う、うっせぇ!いいからあるならさっさと出せ!」
俺がそう怒鳴ると奴は少しニヤつきながら
「・・・お前、弾の数減らして来ただろ?」
俺はすぐに目を逸らした・・・図星過ぎて顔に出てしまうからだ。
恥ずかしい感情が俺の頭の中を駆けめぐる・・・
「・・・ほらよ、これ使え」
俺がそっぽ向いてるとあいつは箱を取り出し、俺に渡してきた・・・よく見なくとも俺の銃の口径にあった弾だ
「・・・ありがとよ、これで戦える」
俺は頭は下げず言葉だけ放った、さすがに礼をするのは恥ずかしかった。
「おう♪・・・だが、今回の仕事は騙されたな、あっちの兵、2、3000は越えてると思うぞ」
そう言いながら奴は小型のレーダーを取り出した、これは最新式で、ここら地域一帯なら敵がどこにいるか正確にわかる。
「やっぱりか・・・」
俺はため息しか出なかった、というよりため息しか出なかった。
なんたってこんな仕事引くかねぇ・・・そう思い俺は立ち上がった。
「・・・ぜってぇ帰って今回の報酬の倍用意させてやる・・・いくぞ!」
俺は2丁のリボルバーに弾を込め終わると両手に構え先に戦場へと走っていった。
「そうだな、あんなんじゃ弾代くらいにしか・・・って待て!」
竜人もあいつの後をついていった、重々しい重甲をガシャガシャと言わせながら。


「っち、やっぱ圧されてんな」
戦場に戻り、戦況を見ると・・・明らかに数でこちら側は圧されていた。
「よしっ、少しは役に立ってやるか」
「・・・金貰ってるんだから当たり前だがな」
俺はそう言うと外側から素早く敵陣に入り込んでいった。
そして奴は・・・戦場の真ん中に立ち、とある物の準備をしていた。
「・・・ヒュウッ♪」
俺は無数にいる敵を全てヘッドショットで倒していった・・・俺の唯一の特技だ。
絶対に的は外さない、どれだけ遠くても弾が届く距離ならば当てられる自信がある。
熊獣人はそうやって自分の周りの敵を有無を言わさず殺していった。
「よし、エネルギー充填良し、位置良し、狙うは・・・敵のど真ん中だ!」
そういうと竜人が持っていた銃・・・まぁ簡単に言えば持ち運びには向かない大型レーザー発射装置なのだがな。
自分で改造してコンパクトにした分、少し威力は下がるが・・・まぁこれでもそれなりにはある。
そして引き金を引いた瞬間、先端が青白く光り、レーザーが発射され四方に分断する。
敵はレーザーに触れるだけでその部分だけぽっかりと穴が空き、次々と敵兵が倒れていった。
「これなら連続で・・・あっつ!」
俺は銃から手を離した・・・あまりの熱量にコンパクト化した装置が持たなかったのか、オーバーヒートしてしまっている。
これではさすがに使い物にはならない。
「お披露目で壊れたか・・・ならば!」
そう言いながら背中に担いでいた9個の穴が空いているでかい銃を取り出した。
名前はミサイルポッドと言う、これは正規品で一切の改造は加えていない。
俺はそれを肩に担ぐとレーザー発射装置を置いて、敵陣に向かって走り出した。
そして走りながら
「敵兵ども!くらえ!」
ミサイルを一回で計9個打ち出した、ミサイルは相手を捕らえるとそれに向かって進んでいき、でかい音を立てて敵陣で爆発していった。


「奴、派手にやってんな・・・」
俺はすでに血だらけになっている地面の上に立っていた。
もう周りは死体だらけだ・・・まぁ殆ど自分がしたんだが。
そしておよそ相棒が撃ったであろうロケットが空中を舞い、敵陣に沈んでいくのが目に見える。
「それにしても・・・減らねぇなぁ奴ら」
俺は敵がいる方を見た・・・まだまだウジ虫みたいにうじゃうじゃいやがる。
本当・・・こんなんじゃ割りにあわねぇよ、たっくよぉ
「でもこいつら全員相手にしてたら弾足りねぇよなぁ・・・」
いくら奴から弾貰ってもさすがにこの数を全てじゃ厳しい・・・
     ・・・なら相手にしなきゃいいんじゃねぇのか?
俺はそう思うとすぐに奴の所に走った。
血が混じった土が軽くぬかるみ、少し滑りそうになったが・・・なんとか着いた。
「な、なぁ・・・」
俺は少し息を切らして横で重火器を扱っている相棒の横にいた。
「む、なんだ?」
俺が話しかけるとすぐにこっちに顔だけを向け、なお重火器を放っていた。
さすがにプロといった所か、顔を向いていなくとも弾丸は全て敵に命中している。
「俺は単独で本拠地に入ろうと思う、でだ、お前にここを任せたいんだが・・・」
俺が早口でそう言うと奴は一旦重火器を止め、重甲の中から袋を取りだした。
「そういうことか、ならこれを持っていけ・・・特殊調合で作った灼熱弾だ」
俺はその袋を受け取った・・・見た目は普通の弾だが、横の方に炎のマークが描かれている。
「そいつは物体に触れるとその瞬間、爆発するもんだ、難しい説明はいらんだろう?」
「あぁ・・・めんどうなのはごめんだな」
俺はそれを聞くと袋を弾を入れているリュックの中に投げ入れた。
「・・・気を付けて行って来い、さっきから敵の様子がおかしいからな・・・」
そう言って奴は一つの敵を指さした・・・なにも変わらない犬獣人に見えるが
「よく見てみろ・・・目だ」
目、そう言われて俺は犬獣人の目を見た。
・・・眼球までも紅くなっているんではないかと思えるくらいにまで紅く染まっている。
少し遠くだからわかりにくいが・・・あんな目をまだ見たことがない。
「狂戦士化状態かもしくは・・・まだ検討はつかないな」
「まぁ、そう言うことだ・・・ここは俺に任せろ、これ以上近づけさせない」
そう言うと奴はミサイルポッドを担ぎ、敵の塊に向けて発射した。
・・・まぁこいつなら信じられるだろう。
「あぁ、任せたぞ・・・お互い無事で会おう!」
俺は背を向け走り出した、生きる事を誓い・・・


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