傷跡
「……グゥゥ…」
木に背をもたれて、息は絶え絶え血まみれの狼獣人が一人。
全身は傷だらけで、さらに胸から右脇腹までにかけて致命傷になりえる程の深い傷が一つ。
そこからは未だ血は流れ続け、自らの毛を赤く染めていく。
「…俺、死ぬのか…?」
ふと、空を見る…真っ暗で、満点の星空って言うのか?星が煌めいている。
…走っていて気付かなかったが、寒い。
それはそうだ、季節は冬、しかも服も何も、下着すら着ていないのだから。
「…追手が来る前に逃げねぇと…ここまでやったんだ、いけるとこまで…!」
狼獣人は傷を抑えながら立ち上がったが、視界はぼやけ、足は言う事を聞いてくれない。
「……ぐあっ!」
二、三歩歩いた所で、何もないのに転けてしまった…もうすでに足に力が入らない。
「痛てぇ…痛てぇよ…」
狼獣人は仰向けになった、傷からは絶えず血が出てきている。
…少しずつ、力が抜けていくのがわかる、もうすでに息をするのすら辛い。
……俺、本当に死んじまうのか?
「……怖い、怖いよ…」
突然、恐怖心と涙が溢れでてきた、死ぬことなんて覚悟していたのに。
今は怖い、辛い…そして何よりも、寂しい。
「生きたい死にたくない生きて…」
もう、息をする力すらない。
もう…生きられないのか?
…せめて、誰かを愛したかった…
「…アイサレタカッタ……」
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