「まさか・・・こんな所でホゥ?」 
 
「あぁ、一応ここで・・・あった、ここから出たんだ」 
俺はそう言いながらさっき突き刺し、掘った場所に指を差した。 
 
「ホゥ・・・まさか下の方だったかホゥ・・・」 
梟のおっさんはそう言いながら掘った後をまじまじと見ている。 
正直言って俺にはよくわからないが・・・ 
 
「・・・あったホゥ、この穴の下にまだあるみたいだホゥ」 
そういうと梟の獣人は知らぬまに金具で掘っていたのか、さっきと同じ石を取り出した。 
やはり、同じ卵型だ。 
 
「ってことは、下の方を掘り進めればいくらでも出てきそうなのか?」 
 
「・・・いや、そうでもなさそうホゥ」 
梟は穴の前を退き、「見てみるホゥ」と俺に促し、ライトを渡した。 
俺はライトで照らし、穴を覗いてみた。 
 
「・・・なんだこれ、ただの石っころだらけじゃねぇか・・・」 
しかも、全て形はばらばら、砂利みたいな感じだ。 
 
「もしかとは思ったが・・・ホゥ」 
そういうと梟のおっさんは腰に付けてる袋からさっきの紙切れを出してきた。 
 
「研究材料がちと少ないが・・・まぁ、いいホゥ、受け取るホゥ」 
 
「あぁ・・・すまない、もしまた見つける事があったらおっさ・・・いや、あんたの所に持っていくよ」 
俺はそういいながら紙切れを受け取る、さすがにこれで貰ったら俺の微かな良心が痛む。 
 
「あぁ、すまんホゥ・・・後、好きに呼んでいいホゥ」 
おっさんって言いかけたのがばれてたのか、梟のおっさんは少し笑いながら答えた。 
 
「あぁ、わかったよ、おっさん・・・じゃ、交渉成立でいいんだな?」 
 
「あぁ、構わないホゥ、こっちもあの石がなにか分かり次第報告しに行くホゥ・・・家はどこホゥ?」 
 
「家か?家は・・・」 
梟のおっさんと俺はそんな他愛のない話をしながら洞窟を出ていった。 
そして気が付くとすでに空が夕焼け色に染まっていた・・・もう夕方だったのか 
早い所、バンクにこの紙切れ渡して金を受け取らないとな・・・ゼル、何してんだろうなぁ 
 
 
ッハァ・・・ハァッ・・・・・・ 
足が痛い・・・多分、爪折れてる・・・ 
 
「追え!逃がすな!!」 
 
まだ追いかけるの・・・?僕、もう・・・ 
 
「くっそ、奴らしつこいな・・・ゼル!」 
 
隣で一緒に走っているミルが叫ぶように声をかけてきた。 
 
「な・・・に・・?」 
 
 
「もう、多分二人一緒じゃ逃げ切れないだろう・・・」 
  
 
「!!・・・そんな、そんなのイヤだよ!僕、ミルが居ないと・・・」 
 
 
「・・・大丈夫だ、お前は・・・」 
 
 
「えっ・・・?」 
「・・・多分、お前一人な・・・に飛ば・・・る」 
 
 
「い、イヤだよ!!ミル!!ミル!!」 
 
「居たぞ!あそこだ!!」 
  
  
 
「ミル!!」 
「・・・ゼル」 
 
       「・・・生きろよ。」 
 
 
「!!!・・・・・・夢?」 
僕は飛び起きた。 
今、なんかすっごいイヤな気持ち。 
 
「ミル・・・ミル・・・・・・」 
ゼルは自然に涙がでていた。 
生々しい夢、だが、実際に起きた夢・・・ 
 
「夢だったらよかったのに・・・夢だったら・・・」 
僕は腕で涙を拭った、鎧竜人特有の鱗が少し痛い。 
ゼルはすっと立ち上がり、なんだか明るい光が差している所に向かった。 
・・・綺麗だなぁ 
 
「・・・ミル・・・生きててね、絶対に・・・」 
ゼルはその窓から見える夕焼けに彩られた街の風景を見ながら呟いた。 
 
 
 
「合わせて、150万Gですね・・・口座は?」 
係りの人が驚きもせずそう尋ねる。 
・・・俺からしたら一生に一回持てるか持てないか、それくらいなんだがなぁ。 
 
「あぁ・・・これでいいのか?」 
俺はボロボロの財布(布袋だが・・・)から殆ど使えわれていない通帳を取り出す。 
残高は多分、ない。 
貯金なんて出来るような金額もらっちゃないし・・・多分、親から一人立ちする為の資金を入れて貰って以降入れてもない。 
 
「はい、それでは・・・・・・どうぞ、入りましたよ」 
数秒して、すぐに返ってきた・・・中身を覗くと綺麗に150万G入っていた。 
 
「あ、少し引きだしておきたいんだが、いいか?」 
 
「かしこまりました、いくら引き出しますか?」 
 
「ん〜・・・それじゃ一万Gで」 
正直言おう、手持ちですら持ったことはない金額だ。 
・・・やっぱり行き過ぎたか・・・? 
 
「はい、かしこまりました、通帳をお渡しして貰っていいですか?」 
 
「あ、はい、どうぞ」 
少し固まるヴェル、特になんとも思わない係員。 
 
「では・・・どうぞ、一万Gと通帳です」 
そういうと係りの人はトレーの上に一万G(単価はコイン)を、そして通帳を俺に渡してきた。 
 
「もしお財布に入れ終わったらトレーを返してください」 
係りの人は笑顔で言った。 
俺はというとあまりの多さに少し呆気に取られていた。 
 
「え、あ・・・はい」 
ヴェルはそういうと自分の布袋の中にコインを入れていった。 
・・・一万Gですら、もうパンパンだ、これ以上は入らないな・・・ 
 
「トレー、どうぞ」 
俺は未だ固まったまま、片言の敬語で係りの人にトレーを渡した。 
 
「はい、ありがとうございます、またのご利用をお待ちしております。」 
係りの人はスラスラッと言い、一回礼をした。 
俺も礼をした。 
そして、金を入れた袋を胸に抱えて、バンクを出た。 
 
「・・・はぁ、ふぅ・・・疲れた」 
なんだか、さっきの事で一気に疲れがでた気分だ、ったく・・・ 
 
「今日は・・・適当に材料買って・・・飯作ってやるか・・・よし」 
俺はそういうと、今の場所からマーケットの方に進んでいった。 
・・・布袋を抱えて。 


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