「む・・・なんだこれは・・・ホゥ」
梟の獣人がヴェルに尋ねた。
 
「いや、自分でもわからないから持ってきたんですけど・・・」
ヴェルは少し困ったように掌を頬につけながら答えた。
 
「ホホゥ・・・さっき言っていたが、響く鉱石か・・・この私でも聞いたことがないホゥ」
といいながら梟のおっさんが言葉を洩らしていた。
っても、俺はこれが金になるなら問題無いんだがなぁ
 
「で、まぁ、あれだ」
 
「む、なんだホゥ?」
 
「とりあえず、いくらで買い取ってくれるよ?・・・それなりの額じゃなけりゃ・・・」
俺は少し試すように言った。
 
「ホホゥ、そうだな・・・!」
梟の獣人は良いことを思いついたのか、口先がニヤリと上がった。
 
「もし、この鉱石が採れた鉱山、そしてその場所を教える、とならそうだな、100万Gやるホゥ」
 
「ひ、ひゃく?!」
俺は素で驚いた、100万Gなんざ、手に持ったことがない上にそんな金額を言われても現実味がなかった。
 
「ホホゥ、そしてそれを私とあの鑑定屋以外に口外しないのなら、+50万Gをやろう、どうかホゥ?」
 
「・・・・・・ど、どうしてんな高値で買い取ってくれるんだ?」
俺はあまりの高さに疑問を持った。
下手をしたらただの石っころ、それにこんなに金を出すなんて・・・
だが待っていた答えは意外とシンプルなものだった。
 
「どうして、か・・・単純に興味が沸いた、かホゥ」
「もし、これが未知の鉱石だとしたら、人類の新しい進歩に繋がるかも知れない、そんな事に金に糸目は付けないホゥ」
梟のおっさんは眼鏡を光らせながら言った・・・生粋の科学者、いや、研究者、か。
・・・だが俺も、そこで一つ条件をつけた。
 
  「・・・その条件、一つこちらから付け加えてもいいか?」
 
「?・・・なんだホゥ?」
 
「もし、その鉱石が何か分かって、どんなモノかわかったら、教えてくれないか?」
 
「ホゥ、それだけでいいのかホゥ?」
おっさんは首を傾げながら言った。
 
「あぁ、それで大丈夫だ・・・で、金は?」
 
「あ、少し待ってるホゥ」
そう言うと梟は研究室の奥に行き、すぐに帰ってきた。
手には小さな紙切れが握られていた。
 
「100万Gはさすがに重いホゥ、これをバンクに引き渡せば、お前の口座に100万G納金されるホゥ」
そう言うと梟はヴェルに小切手を渡した。
 
「あぁ、わかった・・・残りは?」
ヴェルがそう言うと梟は片方の手からもう一枚紙切れを出してきた。
 
「これはその鉱山についてからだホゥ、いいかホゥ?」
 
「あぁ、問題ないな・・・それじゃ来てくれ。」
 
「ホゥ、道案内頼むホゥ」
梟はそう言うと上着の白衣を脱ぎ、焦げ茶色のコートを着た・・・多分鉱山内で地獄を見るな。
ヴェルはそう思いながら言わずに居た。
そして、ヴェル達は研究所を後にした。
 
 
「見つけたぞー!追えー!!」
 
「やばいっ・・・ゼル、走れ!!」
 
「うんっ!」
僕はそう言うと、ミルの後を必死について回っていた。
そりゃ恐かったけど・・・けど、ミルが居るだけで、大丈夫な気がした。
 
「くそっ、どこ行きやがった!あの糞竜共!!」
 
「捕まえたら足撃ってやる・・・くそっ!」
 
           ――・・・・・・・・・・・・
 
「なんとか、撒けたみたいだな・・・」
ミルは胸に手を当て、深呼吸をし、息を吐いた。
 
「ねぇ、ミル・・・僕達、どこまで行くの?」
 
「・・・この先には、確か、シン国って国があるはずだ・・・そこまで逃げ切れれば」
ミルは指を差した・・・確かに微かに見える、小さな、小さな建物が。
 
「この森を抜けたらすぐだ・・・ゼル、立てるか?」
ミルはそう言いながら立ち上がり、僕に手を差してきた。
 
「うん、僕はまだ大丈夫・・・ゼルは?」
 
「俺は大丈夫だ、お前より体は丈夫だからな」
ミルは少し笑顔をまじえながらゼルに言った。
 
「僕・・・体弱くてごめんね・・・」
僕は差し伸べられた手を掴むと、ゆっくり立ち上がった。
 
「そういうことじゃねぇっての、ったく、いくぞ!」
そう言ったと同時に、ミルはゼルの手を掴み、シン国に向かって歩きだした。


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