「こりゃ・・・見たことないのぉ」
鑑定屋のイヌのおっさんが呟く。
 
「なに、あんたでもわかんねぇのか?」
 
「わしが全て知ってるとでも思うな、若造が・・・だが、響く鉱石なぞ、聞いたことすらないぞ」
そういいながらおっさんは小さな鉄の棒でその鉱石を鳴らしていた。
カキーーン、カキーーン、と、音が響く。
 
「なら、価値はどうなんだ?たけぇのか?」
俺は一番気になることを聞いた、今はどれだけ希少な鉱石だとしても、金になればいいと思っている。
 
「むぅ、なんとも言えんが・・・」
鑑定屋は頭を傾げながら、悩んでいた。
 
「・・・・・王立の、鉱石研究所に行ってみたらどうじゃ?」
ふと思い立ったのか、おっさんは顔を上げ、俺に言ってきた。
 
「王立?なんだそりゃ」
 
「簡単に言えば、お主らから買った鉱石を更に高値で買い取ってくれる奴らの事じゃ、無論、個人での取引は基本してないがの」
「わしでも見たことない鉱石じゃ、奴らは飛びつくじゃろうて・・・これを持ってけ」
そう言うとおっさんは一枚の紙切れを俺に渡した。
 
「これはなんだ?」
 
「それさえあれば研究所内に入れてくれるじゃろうて、まぁ許可証じゃ」
 
「ほう、悪いな・・・って、そっちが買い取った方がいいんじゃねぇか?」
 
「何、価値もわからんもんに金はだせんよ・・・それに、もしそれが未知の鉱石だとしたら教えてくれるだけで構わん」
そう言いながらおっさんは少しニヤッとした。
 
「へっ・・・わぁったよ、んじゃちょっくら行ってくるわ!」
ヴァルはベルライト鉱石を売って手に入った金を入れてある袋と、その鉱石をその中に入れ、鑑定屋を出ていった。
 
 
 
「ミル〜、なにしてるの〜?」
僕は今、なんだかほぁんほぁんしてる所にいた。
とっても暖かくて、明るくて・・・だけど、見覚えがある場所。
そしてミルが居た。
 
「ん・・・サークル描いてんだ、お前もやってみるか?」

「サークル・・・?なぁにそれ?」
ゼルは首を傾げた。

「サークルってのはな、ようはおまじないだ」
「こうやって・・・お願いをしながら描いていくんだ・・・」
そう言いながらミルはサークル・・・「魔法陣」を描いていた。
 
「お願いかぁ・・・ミルはなにをお願いしてるの?」
 
「俺か?俺はそうだなぁ・・・ここから出られること、かな」
 
「ここから・・・この牢屋から?」
 
「あぁ、そうさ、俺はこんな所には居たくないからな」
 
「もっと広くて、自由な場所に行きたい、俺はそう願ってる」
 
「そうなんだぁ・・・なら僕もそう願うよ」
 
「僕も・・・ミルと一緒に、広くて、自由な場所に行きたいなっ」
 
「おう、ならお前も連れてってやる!楽しみにしとけよ〜」
ミルはそう言い、サークルを牢屋の地面に描いていった。
 
「うんっ!楽しみにしてるね!」
僕は笑っていた、広くて、自由な場所ってどんな所なんだろうって
それに、ゼルと一緒ならなんでも出来ると思っていた。
どんな所でも、生きていけるって、思ってた。
 
それから、数日経ってからだった、ミルはゼルにこう言った。
 
「おい、ゼル・・・ここから出ないか?」
 
「えっ、でも・・・どうやって出るの?」
ゼルがそう言うと、ミルは地面に掘っていた魔法陣を見せた。
 
「昨日、ようやく完成した・・・多分、これで外に出られる」
 
「えっ・・・本当に?」
 
「多分な、失敗するかもしれないが・・・着いてくるか?」
ゼルは、すぐに頭を縦に振った。
 
「うん、もちろん!僕、ミルに着いてくよ!」
 
「そうか・・・なら行くぞ、俺の手に掴まれ」
ゼルはぎゅっと、ミルの片手に掴まった。
僕と同じくらいの歳なのに、大きくて、安心できた。
 
「お願いだ・・・成功してくれ!」
ミルはそう言い放つと同時に、空いている片手を魔法陣の真ん中につけた。
するとそこから光が溢れだし、僕達を包んでいった。
 
「なんだ・・・!!脱獄、脱獄だぁぁぁぁぁ!!!」
犬の警備員が叫ぶ、だが、その時にはすでに二人の姿は消えていた。
 
 
「っはぁ・・・はぁっ・・・なんとか成功したみたいだが・・・」
周りを見ると、そこは自分達が居た王国の外側だった。
 
「こりゃ、走らないとやばいな・・・ゼル!」
 
「わぁ、外だ・・・どうしたの、ミル?」
初めて見る外の風景に、ゼルは魅とれていた・・・外の世界はこんなに広かったんだ。
 
「多分すぐに追っ手は探しに来る、急いで逃げるぞ!」
そう言うとミルは僕の手を握り、走り出した。
僕もそれに合わせて走り出す、その時、不意にドキドキした。
外に出れた嬉しさか、何かはわからなかったけど、ドキドキした。
 
 
「あ・・・なにこれ?」
逃げる為に走っていたら
空からぽつぽつと降ってきた、水かな?
 
「これは雨だ・・・汚いから飲むなよ?」
とミルは言う、ちぇっ、喉乾いたから飲もうと思ったのに。
と、ゼルは少しはぶて顔になった。
 
「無事に逃げ切れたら水なんていくらでも飲ましてやるから、我慢しろ、わかったな?」
 
「・・・うんっ!」
ゼルは笑顔で頷いた。


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