さて・・・これからどうすっかなぁ
ヴェルは考えていた、これからの事を。
拾ったのは俺だし、育てるのは俺しか居ないよな・・・だがしかし、そこで一つ問題が生じた。
何より、金がない。
ヴェル自身、まだ見習いの枠に入っているせいで、給料が一人暮らしが何とか出来る最低限の賃金しか貰えてないのだ。
ただでさえ一人でもきついのにゼルを養うとなると・・・少し身震いがした。
 
「美味しい・・・♪」
そう考えているヴェルの隣で、ゼルはヴェルが作ったご飯を食べていた、箸は使ったことがないらしいのでスプーンで食べている。
ただ、料理は至って質素、食パン二つに、目玉焼きが一つ、乗っけてあるだけだ。
それで美味しいと笑みをこぼして言ってくれるからまぁ・・・助かるんだが
だがしかし、貯金なんてないし、かと言ってこいつを・・・いや
 
「なんとか、するしかない、か・・・」
ヴェルはぼそっと呟くように言った。
「んっ?」
ゼルは食パンをモグモグ食べていた顔をヴェルに向けた。
「ん、気にするな・・・よし」
ヴェルはすっと立ち上がると食パンを袋から一枚取りだし、口にくわえ、ベッドの上に置いてあったカバンを持った。
「ちょっと俺は出かけてくる、留守番頼めるか?」
 
「え、あ・・・すいません・・・るすばんってなんですか?」
 
「(そんな事すら知らないのか・・・)え、あぁ、家に居てくれないか?って事だよ」
 
「あ、そうなんですかぁ〜、なら任せてください!」
ゼルは笑顔で答える、口の端に黄身をつけたままで
 
「おう、なら任せたぞ!」
俺はそう言うと手を振り、家を出ていった。
 
 
「パン・・・美味しい・・・これはなんなんだろう?とっても濃くて、パンにつけるとまた美味しい・・・♪」
ヴェルが部屋を出た後、ゼルは先ほど軽く食べた目玉焼きを食べていた、勿論パンの上に乗っけて。
 
「こんな美味しいもの食べたの初めてだ・・・♪」
僕はパンと共に上に乗っけた美味しいものも一緒にかぶりついた。
その瞬間、卵から黄身が少し吹き出してしまい、ゼルの顔についた。
 
「わわっ・・・でも美味しい」
ゼルは少し驚きながらも顔についた黄身を指で掬い舐めた。
 
その後、ゼルは残ったパンを食べ続けた。
 
「・・・・・・ふぅ、お腹いっぱい」
お皿に乗っけてあったパンと目玉焼きは綺麗に無くなり、ゼルは転がった。
 
不意に、ミルの事を思い出した。
どうしてミルはあんなに僕のことを・・・あんな事が出来るならミルが逃げたら・・・
そう思うと、なんだかすごい辛くなった。
それに、なんだか落ちていく様な感覚になる前に聞こえた・・・あれって・・・
 
        ミル・・・生きてたらいいな・・・
 
ゼルは無意識に涙を流していた。
ミルは、ゼルにとってたった一人の友達だったからだ
それなのに自分だけ・・・・・・ゼルはふと、とある言葉を思い出した。
 
         ――生きろよ
 
「・・・うん、頑張るよ、ミル・・・」
僕は、少し眼を瞑った、ミルに少しでも会えるような気がして。
だが、今までの事があって、まだ疲れていたせいか、ミルはすぐに寝に落ちていった。
 
 
「ふんぬっ!ふんぬっ!」
一方、その頃ヴェルはツルハシを持って洞窟内を掘っていた。
ここはベルライト洞窟、一般人でも入れる洞窟だ、で、どうしてそんな所でヴェルがこんな事をしてるかと言うと
それなり、な鉱石が時々、採れるからである、主な産出物は名の通りベルライト鉱石。
だがヴェルが狙っていたものは少し違っていた。
 
「っはぁふぅ・・・オリハルコン・・・ここで出たって聞いたんだが・・・」
俺は溢れ出る汗を手で拭い、上を向いた。
当たり前だが、天井しか見えない、蒸し暑いし。
そう、ヴェルが狙っているのはオリハルコン、非常に希少で、価値が高く、ベルライト鉱石なんて比べ物にならない。
一つでも当てたら当分は楽になるんだが・・・くそっ!
 
ヴェルはこの蒸し暑さと汗、ついでに言うとボロボロな服に軽くイラッと来てしまい、ツルハシを足下にザクッと
 
           ――カキーーン・・・
 
「・・・?」
ヴェルは音に少し変な違和感を感じた。
普通、こんな延びる様な音がするような鉱石なんて聞いたことも見たことも・・・・・・
 ま さ か 
俺はツルハシを持ち上げ、もの凄い勢いで(ついでに形相)でその周りを掘り上げていった。
すると、少しだけ形が見えてきた・・・だが、ヴェルは少し落胆した。
この色は、オリハルコンじゃない、と気付いたからだ。
 
「なんだ・・・違うのかよ」
だが、見たことすらない鉱石だ・・・下手したらたけぇんじゃねぇのか?
という淡い期待を抱いて手で小さい石や土を取り除き、その鉱石を取り出した。
 
「・・・本当、なんなんだか」
見てみると卵みたいな形をしており、一見小さいのだが、意外と重さはある。
試しに指先で弾くと、鈍い痛みと共に先ほどと同じ様な音を発した。
 
「まぁ、鑑定屋に持っていってみっか・・・生活費の足しになりゃいいが」
俺はそう思いながら、ツルハシを担ぎ、ベルライト鉱石も入ってる袋にその鉱石を入れ、洞窟を後にした。


戻る