その日は、雨が酷く降っていた。
まるで俺の体を洗ってくれるが如く・・・

「・・・気持ちいいな・・・」
 
俺は軽く顔を手で擦った、そして手を見ると、軽く黒に染まっていた。
 
「はっ・・・きったねぇなぁ・・・はぁ・・・」
 
軽く項垂れる狼人・・・彼の名前はヴェル・スパード。
そう、タンクトップを着て、本来グレーの色の毛が黒くなってる奴がそうだ。
職は鍛冶の手伝いとして働いている、今は雑用しかさせて貰えていない。
 
「・・・早く帰って、ねよ、それがいい」
 
そう呟きながら彼は自分が住んでいるボロアパートに向かってゆっくりと歩き出した。
 
・・・・・・はら減ったなぁ・・・
 
 
ッハァ・・・ハァッ・・・・・・
足が痛い・・・多分、爪折れてる・・・
 
「追え!逃がすな!!」
 
まだ追いかけるの・・・?僕、もう・・・
 
「くっそ、奴らしつこいな・・・ゼル!」
 
隣で一緒に走っているミルが叫ぶように声をかけてきた。
 
「な・・・に・・?」
 
僕は息が絶え絶えになるのを覚えながら聞いた。
 
「もう、多分二人一緒じゃ逃げ切れないだろう・・・」
 
「!!・・・そんな、そんなのイヤだよ!僕、ミルが居ないと・・・」
 
「・・・大丈夫だ、お前は・・・」
 
そう言いかけるとミルはゼルが走ってる目の前にすぐに魔法陣を展開させた。
 
「えっ・・・?」
「・・・多分、お前一人ならどこかに飛ばせれる」
 
止まろうとしたが、間に合わず、魔法陣に突っ込んでしまった。
 
「い、イヤだよ!!ミル!!ミル!!」
 
僕は魔法陣の中に入れ込まれ、魔法陣の外にいるミルに向かって、大声で話すが、魔法陣を叩くが・・・
 
「居たぞ!あそこだ!!」
 
もう、すぐそこにいる追っ手、微動だにしないミル。
ゼルはイヤな予感がし、魔法陣を叩く力も、声も無意識に大きくなった。
 
「ミル!!」
「・・・ゼル」
 
       「・・・生きろよ。」
 
ミルがそう言い放った瞬間、魔法陣の窓は徐々に閉じられていき・・・完全に閉じられた。
だが、微かに聞こえる声があった。
 
           「っち、くそが!一匹逃がしちまったじゃねぇか!!」
 
          「まぁ、一匹捕まっただけでもよしとしようじゃねぇか?」
 
                  「・・・この糞竜がぁ!!」
 
              ――バンッ!・・・
 
「!!・・・ミル、ミル・・・・・・」
 
              ――バタッ・・・



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